私の悩み~自問自答編~

  あら?こんなところに、大きなニキビ。

  ジィッと鏡をほぼ睨み付けながら、忌々しい真っ赤なソレ目掛けて、右薬指で入念にクリームを塗り込む。まったく、こんなものいつの間にできたのだろう。しかし、そこでふと私は違和感に気が付いた。

  あら?ついこの前も確か、ここにできていなかった?

  というより、最近ニキビの数があきらかに多くない?

  まさか、と嫌な予感が首を擡げて、大慌てでスマートフォンを手に取りネットで検索を掛ける。そして、そこに並んでいた文字の羅列を見て、私は愕然とした。

  女・24歳。肌の老化現象、いわゆる“お肌の曲がり角”なるものに突入である。

  ニキビというものが、私たち女性に齎す影響力というものは凄い。たった一つ、そこにあるというだけで、女性の一日の気分を大きく左右させてしまうのだ。

  この前買い換えた化粧水が、肌に合っていないのか。それとも、流行りに乗って買った乳液がやはり駄目だったのか。まさか、今まで信頼して長年使っていたクリームが合わなくなったのか。

  次々と脳裏に浮かび上がる様々な疑問と心配から、必死にスマートフォンでネット検索をして、ニキビに効果のあるという口コミ評価の高いものを片っ端からチェックする。

  人類ばかりでなく、動物であれば誰にでも平等に訪れているはずの“老い”という現象が、その時の私には急激に酷く恐ろしいものに感じたのだ。

  そうでなくても、こちとら、ただでさえ悩みは尽きないのに。職場、転職、家事、友達、恋愛、結婚。毎日てんやわんやである。正直、ニキビなんぞに構っている暇なんてない。

  職場環境は非常に良いが、それでも多少なりとも感じるストレスは、日々積もり積もっていく。また、今はパート勤務のために、収入上の関係からスキルアップも兼ねた転職をこっそり検討中。

  未だに実家暮らしのため、妹の学費のために正社員で働いている母と、大学生生活を存分に満喫している妹に代わって、料理、洗濯、掃除などの家事に日々追われている。

  そしてついでに、犬の散歩も毎日二時間。これがまあ意外と生活を圧迫するのだ。それでも我が家のアイドルのために、梅雨の日も欠かさず散歩をする。

  友達は、親友なるものは少なくはない。SNSが発達して気軽に連絡することができるこの便利な時代だが、それでも頻繁に連絡を取り合う友達となると、これまた非常に少ない。大学では毎日あれだけ仲良く過ごしていたのに、社会人になった途端、みんながあちこちへ散り散りになってしまった。

  恋愛は、凡そ四年間に渡ってお付き合いをさせて頂いている年上の彼氏がいるが、プチ遠距離恋愛というもので、まあ当然に中々会えない日々が続いている。何せ、このコロナ禍だ。県外への移動はなるべく避けたい。世の遠距離恋愛をしているカップルたちは、一体この危機をどのように乗り越えているのだろうか?妙案があるなら是非とも教えて頂きたいものだ。

  結婚は、実のところ一番頭が痛い。祖母から「早くひ孫を抱かせておくれ」との催促の電話が来るわ来るわ。結婚云々よりも、まず今の私などのような未熟な者が、妻になれるのか、ましてや母になれるのかどうかすらも分からない。

  書き連ねておきながらなんだが、こうして改めて挙げてみると、こんな生活をしていればニキビの一つや二つ、できて当然である。

  だが、いくら私が現実から目を逸らしたところで、右頰にできた大きなニキビは消えてくれない。むしろ、今きちんとケアしておかなければ、一生痕が残り続けることとて有り得るのだ。それだけは嫌だ。

  結局悩みに悩んだ挙句、ニキビに効果的だと口コミで評判の良かった外国製のクリームを、コロナに配慮してネットショッピングで購入した。思いの外早く届けられた読めない韓国語の並ぶパッケージのそれを、手鏡と睨めっこして、就寝前にじっくりと塗り込む。そんな生活を、凡そ二週間に渡って過ごした。

  そうしていくと、あれだけ大きかった赤いニキビも、次第に化粧で隠れるほどに目立たなくなっていった。

  万歳。ネットの口コミさまさまである。

  しかし、徐々に小さくなっていくニキビと毎日向き合っているうちに、ふと改めてとあることに気が付いた。

ここのところの自分自身が、己の体を顧みることを如何に怠っていたのかいうことだ。

  仕事についてのストレス、食生活の乱れ、睡眠時間と質の低下、友達とのコミュニケーション不足、コロナ禍のせいで行けていなかったホットヨガ。

なるほど。思い返せば、このニキビの原因は案外そこいらにたくさん転がっていたのだ。灯台下暗しとは、まさにこのことである。

  そこに気が付いてしまえば、もう早かった。

  食生活はなるべく三食自炊を。就寝直前にスマートフォンは触らない。家で行う少しのヨガ。仕事に関しては、今すぐの改善は難しいから、あまり思いつめずに。そうして自分自身の体に配慮して生活を少しずつ改善していくと、今までどんよりと薄暗かった人生が、少しだけいいものに思えてきた。

  自分自身の悩みと向き合い、原因を突き止め、入念にケアをする。

  こうして自分自身に手間を掛けてやることも、存外、悪くはないものだ。

著 ミントチャットレディ ☆ことり☆


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